離婚によって生じる様々な経済的変化
離婚を考えるなら、まず離婚後の生活を具体的にイメージすることが大切です。離婚後の収入のあてがあるかというのが思い浮かばれると思いますが。すでに自分で生活の糧を得ている人はともかく、これから収入を確保しなければいけないという人にとっては、離婚の決断を一時の感情にまかせるわけにはいきません。
また、離婚に際し、収入の少ない配偶者への金銭的な負担が生じる可能性がある人もいると思います。いったいどのようなお金をどの程度負担する必要があるか知っておく必要があります。
離婚を決断する前に、まずは経済面から、離婚後の生活設計を立てることが可能かどうか考えてください。離婚するかどうかの判断については、生活イメージをすることが大切です。
まず、離婚によって法律上、支払いが発生しうるお金について整理しましょう。離婚の際、もしくは離婚後に発生するお金は以下の3つが主になります。
- 養育費
- 財産分与
- 慰謝料
このうち、財産分与は離婚後2年以内、慰謝料は離婚後3年いないに請求しなければ、時効によって請求の権利を失うことになります。
※財産分与や慰謝料は一時金、養育費は定期筋で支払われることが多いですが、相手に資力が無ければ、財産分与や慰謝料は分割払いということも可能です。
また、離婚を切り出してから成立するまでには時間がかかります。別居して話し合いをする場合も多くありますが、一方に生活できるだけの収入がない場合には、収入の多い方が生活費として婚姻費用を分担する義務があります。離婚後も一方の生活が困難な場合は、仕事を見つけるなど安定した収入が得られるまでの生活費を離婚後扶養として受けることができる場合があります。
さらに、2007年4月からは厚生年金の分割制度が制定されたので、結婚期間中の厚生年金(老齢厚生年金)保険料納付実績を夫婦で分けることができるようになりました。離婚後の生活設計を考えるにあたって、老後の年金金額がどう変わるかを知っておくことも大切です。
主なもの | 例 | 金額の目安 | 請求の事項 |
---|---|---|---|
離婚にかかわる様々なお金 | |||
養育費 | 子供を育てる側に支払う、子供が成人になるまでの子育て費用 | 月額6~8万円 (14歳以下の子供二人、夫の年収が500万円、妻の年収が100万円の場合) |
内容によって変わる |
財産分与 | 夫婦が協力して気づき上げた財産を分けあう | 100万円以下が多く、1,000万円以上になる場合は非常に稀 | 離婚後2年 |
慰謝料 | 精神的苦痛に対する損害賠償 | 200~400万円 ・100万円以下の場合も多い |
離婚後3年 |
年金分割 | 夫婦の老齢厚生年金の同経学を最高2分の1まで分け与えることができる | 月額5万円程度 (妻が専業主婦で、夫の定年退職時に離婚の場合) |
2007年3月以前に離婚した場合は、年金分割ができない |
婚姻費用 | 離婚成立までの生活費 同一の生活レベルを維持できる費用 |
月額6~8万円 (年収が夫500万円・妻100万円の場合) |
夫と別居時に支払われる |
離婚後扶養 | 離婚後に安定した収入を得られるまでの生活費 | 月額5万円程度 (夫の年収が500万円程度の場合) |
財産分与や慰謝料に含めて負担される場合が多い |
上記は、収入の多い夫が収入の少ない妻に対して負担する場合の一例です。金額の目安は平均的な実態で、婚姻危難や資産の額、離婚原因などによって異なります。
離婚前の取り決めが重要
離婚に際して、金銭その他の財産については、ちゃんと夫婦間で取り決めを行う必要があります。養育費や婚姻費用などは、夫婦間で収入の少ない側か多い側に対して、当然請求する権利があるものです。負担する側にとっても、不当な額を請求されないように正しい知識をもっておく必要があります。取り決めを行わなかったために、受けるべきお金を受けられなかったり、後になって予想外の金額を請求されたりというトラブルがよく起こっています。
離婚を考えた時点では、まず「別れること」に気を取られて、お金のことは後回しにしてしまいがちです。しかし夫婦間に子供がいる場合などはなおさら、離婚後の生活設計をしっかり立てるのが親の責任です。
離婚のほとんどは夫婦の話し合いによる協議離婚のため、調停調書などの書類が不要です。取り決め時効は契約書もしくは合意書・念書などにして夫婦の署名捺印をする必要があります。
ただし、文書に残すだけでは、相手が約束を破った場合に強硬執行力がないため、差し押さえなどの強制執行ができるように、最終的には公正証書にしておくことが望ましいです。公正証書は、夫婦または代理人で公証役場に行き、公証人に取り決め内容を文書にしてもらえば作成することができます。
※強制執行ができるようにするには、「債務不履行の場合は直ちに強制執行ができる」旨の文(執行承諾書文言)を公正証書に入れておく必要があります。
離婚後に受けられる助成制度
配偶者の収入が主に世帯を支えていた場合、離婚した後は、自分で経済的自立の方法を考えていかなければいけません。
とくに小さい子供がいる場合、子供を引き取って離婚した側は、経済的に苦しい立場になりやすいです。仕事に就く事が難しい母子家庭の平均年収は200万円程度しかなく、父子家庭においても、育児のために賃金の低い仕事に転職せざるを得ないなど、厳しい現実があります。そこで、このような場合、国や自治体からどのような援助が受けることができるのか、離婚にあたって公的福祉制度をよく知っておくことが大切です。
ひとり親家庭の公的援助としてまず、あげられるのが、児童扶養手当です。これは、18歳以下の子供を養育しているひとり親が対象で、前年度所得が57万円以下の場合は全額支給で、子供一人なら月額4万1,550円が支給されます。所得が57万円を超える場合、所得に応じて減額された一部が支給されます。
一方離婚家庭に限らず、子供を養育中の全過程を対象とする手当(子供手当)がります。現行制度では、3歳未満のことぼには一律月15,000円、3歳~小学校終了前までの子供には月1万円(第三子以降は15,000円)、中学生には一律10,000円が支給されます。このほか、ひとり親家庭に対しては、医療費助成や水道料金の減免、母子家庭自律支援緩給付近事業など、自治体によって様々な公的支援があるので、離婚後住居する市町村に問い合わせておくことをお勧めします。
※公的福祉制度の女性には一定の所得制限があることが多いです。
※自動扶養手当は、2010年8月より父子家庭も支給の対象となりました。
※2012年以降は、新たな制度の開始に向け支給額や所得制限などが検討されています。
ひとり親家庭の主要統計データ