話し合いで合意するのが協議離婚
離婚は、その手続きの過程によって協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚・和解離婚の5種類に分けられます。
全体の約9割を占めるのは、協議離婚です。これは、夫婦が話し合って
- 離婚に合意すること
- 離婚届を作成して役所に提出すること
というだけの、最も簡単な離婚の方法です。
民法763条は、「夫婦は、その協議で離婚をすることができる」としています。夫婦2人の話し合いによって、離婚自体・姓と戸籍・親権・お金について合意に至れば、離婚届に必要事項を記載し、署名・押印します。これを役所に提出して、受理されれば協議離婚は成立します。
その際、養育費・財産分与・慰謝料などのお金に関する取り決め事項があるときは必ず、公的文書であり強制力を持つ公正証書(強制執行認諾文言付き)を作成しておきます。公正証書には、調停調書や判決と同様の効力があり、お金に関する支払いの約束が守られなかった場合、相手の財産を直ちに差し押さえることができます。
協議離婚の場合、各種取り決めは夫婦間の口約束で済ませてしまいがちです。しかし後のトラブル防止のためにも、公正証書は必ず作成しておきましょう。
協議離婚
調停の基本は話し合いを進めること
離婚についてのさまざまな取り決めは、あくまでも夫婦の話し合いが原則です。しかし、夫婦2人の話し合いだけでは、離婚自体もしくは親権者や養育費・財産分与・慰謝料などの条件面での合意ができず、なかなか離婚が成立しない場合があります。このような場合や、そもそも相手が話し合いに応じない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます。
調停の申し立てが受理されると、第1回目の調停期日は裁判所によって指定され、双方に調停期日呼出状が送られます。もし、どうしても指定された日時に都合がつかない場合は、期日変更申請書を提出します。2回目以降の調停期日は、調停の席上で双方および調停委員のスケジュールを照合し、調整した上で決定します。
調停では、夫婦が持ち寄ったそれぞれの言い分をもとに、男女各1名ずつの調停委員が間に入り、双方が納得できるような合意点を探っていきます。調停の基本はあくまでも話し合いを進めることですが、夫婦が直接話し合うわけではなく、調停委員を通じてやりとりを進めます。
また、調停が進行する中で、離婚に対する夫婦の考えが変化した場合は取り下げることもできます。このとき、相手の同意や取り下げる理由は必要ありません。
調停成立の流れ
調停での話し合いはどう進められるか
第一回調停期日では、まず先に申立人が調停室に入ります。この間、相手方は相手方控え室で待機しています。申立人は、調停を申し立てるに至った経緯、夫婦の現在の状況、子どもの問題などについて、調停委員から質問されます。所要時間はケースバイケースですが、だいたい30分が目安です。
次に、申立人と交代して、相手方が調停室に入ります。申立人は申立人控え室で、調停委員が呼びに来るまで待機しています。調停委員が申立人の話した夫婦の状況について、相手方に確認をします。それから相手方の言い分や離婚の意思について、話を聞きます。
調停委員は夫婦の状況を把握した後、解決策を提示します。この調停での話し合いは、1ヵ月に1度くらいの頻度で数回に渡って行われます。この時点で双方が離婚とその条件に付いて合意をすれば、調停離婚が成立します。数回の話し合いを経たにもかかわらずどうしても合意に至らない場合は、調停は不成立となり、終了します。
調停は、弁護士や代理人を付けたとしても、原則として本人が出席しなければなりません。相手が離婚に応じないケースでは、相手が出頭しない事態も考えられます。この場合、家庭裁判所の調査官が事情を調べて出頭を促します。それでも出頭しない場合は、調停は不成立となります。
調停陳述書は用意しておきましょう
調停の利点とは?
調停には、以下のようなメリットがあります。
- 第三者が間に入り解決策を提示してくれる
- 配偶者と顔を合わさず話し合いができる
- 難しい手続きがないので弁護士に依頼してなくても自分の力でできる
- 裁判と違い当事者以外の者から一方的に判決を下されない
- 法定離婚事由を必要としない
- 調停で離婚が成立したとき作成される調停調書には強制力がある
- 公正証書作成より調停費用のほうが安いが、同じ強制執行力がある
このような利点もあるので、話し合いに行き詰まっている状況ならば、調停へと踏み出すのもよいでしょう。
※調停費用・・・調停申し立てには、印紙代約1,200円、呼出通知の切手代約800円が必要(裁判所によって若干異なります)