法律的な婚姻関係を結ばない男女が増加

結婚の意思がありながら、入籍せずに夫婦同然の生活をしている関係を内縁関係といいます。内縁と聞くと、以前は、何かやむを得ない事情があって入籍したくてもできない男女というイメージがありました。

しかし、最近は、結婚までの準備期間や、現在法律上みとめられていない夫婦別姓を実現するための便宜的な方法としてなど、むしろ当事者が積極的に婚姻届をださないで共同生活を営んでいるケースが急増しています。同義語として、事実婚準婚という新しい言葉も生まれています。

ところで、離婚とは法律上の婚姻関係を解消することですから、そもそも婚姻関係にない内縁関係においては、離婚という概念という存在しないように思われるかもしれません。

しかし、内縁関係は、本来愛情によって結ばれている男女が、結婚を前提にして共同生活をしてきたわけですから、婚姻に準ずる関係とみなされます。

法的にも、夫婦の貞操、同居、扶助、婚姻費用の分担義務などの規定が適用されます。したがって、それを正当な理由なく一方的に解消することは、もう片方にとっては、精神的苦痛のみならず生活自体を揺るがすことに等しい行為です。

そこで、これは内縁の不当破棄とみなされ、破棄された側は、損害賠償を請求することができます。

※夫婦別姓・・・男女がいずれかの姓を選択するよう強制されることなく、別姓のまま法律上婚姻できること。現在日本では認められていない。

内縁関係

内縁関係

内縁関係で認められる主な権利と義務

  • 夫婦の同居・協力扶養義務(民法752条)
  • 貞操義務、離婚費用の分担義務(民法760条)
  • 日常家事義務の連帯責任(民法761条)
  • 夫婦財産制に関する規定(民法762条)
  • 内縁不当破棄による損害賠償、内縁解消による財産分与(民法768条)

結婚に準ずるとして、一定の法的保護があたえられています。

事実上の結婚生活解消による損害賠償と財産分与

離婚届は出していないものの、実質的には夫婦としてせいかつしていた日々。それを一方的に解消しようといわれたら、納得できなくてあたりまえでしょう。しかし、内縁関係は法的な婚姻関係ではありませんから、その解消を拒否して争っても、法の場ではあまり意味がありません。この点は、法的な結婚との違いとして認識しておく必要があります。

とはいえ、法律的に結婚はしていなくても事実上の夫婦生活を営んでいるわけですから、相手の同意なく内縁関係を不当に破棄し、事実上の結婚生活を解消した場合は、婚姻関係にある男女と同様、損害賠償や財産分与が認められます。

まず相手の裏切り行為(不貞)にたいしては、事実上の結婚生活を営んでいる以上、内縁関係といえども互いに貞操義務を負っているという考え方になります。そして、不貞によって内縁関係を解消された場合は、そのことに起因する損害を請求する事ができます。

また、2人で築いた共有財産がある場合は、内縁関係の解消にともなって財産分与の対象になります。そして、当事者間で話し合いがつかない場合は、調整や審判の申し立てを行い、決着させることになります。

死亡によって内縁関係が解消された場合でも、財産分与を請求できます。

内縁の不当破棄にともなう慰謝料と財産分与

相手の不貞行為

不倫行為

損害賠償を請求できる

内縁関係を破綻させた相手への請求も可能

共有財産があるとき

共有財産

財産分与の対象になる

合意に至らない場合、裁判所に調停や審判の申立も可能

パートナーの財産相続

内縁関係の相手が死亡

内縁関係は相続人になれない

パートナーの死亡による内縁関係解消に対し、財産分与を可能とした判例がある

内縁関係の男女に子どもがいる場合

内縁関係の男女間の子どもについては、考えておくべき問題がいくつかあります。

まず戸籍については、法的な婚姻関係でないため子どもは母の戸籍に入り、親権も母の単独親権となります。ただし、父が子どもを認知した場合は、父母の協議により父の単独親権とすることや、「子の氏の変更許可」により父の姓を名乗ることも可能です。

内縁関係が解消された場合、子どもの母から子どもの父に対して養育費の請求ができます。しかし、父が自分の子どもとして認知していない場合は、父子関係を証明する訴えを起こす必要があります。

したがって内縁関係であっても、子どもが生まれたときには、あらかじめ父に認知を求めておくことが大切です。

内縁関係のこどもについては?

戸籍は母の戸籍

母の戸籍に入り、母の姓を名乗る。認知を受けた場合は、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」が認められれば父の姓に変えることができる。

親権は変更が可能

母の単独親権となる。ただし、認知された子どもの親権は、父母の話し合いによって父の単独親権とすることもできる。

養育費は請求できる

母から子どもの父に対して、養育費の請求ができる。ただし、父が認知していない場合は、請求が認められにくい場合もある

認知は求めておく

父の遺産相続も認知されている場合のみ請求できるなど、子どもの将来のためには父に認知を求めることが望ましい。父が認知を承諾しない場合は、裁判所にこれを請求できる

内縁の夫との間に子どもができる

重婚的な内縁関係の場合、保護は限定される

夫(妻)が妻(夫)の元を去り、愛人と暮らし始めることで生じる内縁関係もあります。

この場合、夫(妻)は妻(夫)と離婚していないため、法的な意味での婚姻関係は継続していることになります。また、一方で愛人との共同生活も始まっていることから事実婚の状態にもあり、重婚といってもおかしくない状況にあります。

こうした重婚的内縁関係は、基本的に公序良俗に反するもので、かつての判例ではいっさい法的な認知をせず、保護も与えないという考え方が主流でした。

しかし重婚的内縁だからまったく保護を与えなくてもいいという考えに立ってしまうと、事実上の妻または夫の立場に立たされた人が著しく不利益を被ることが予測されます。

たとえば、妻の元を去った男性が愛人の元で共同財産を築き、さらにその後にまた別な愛人の元へ去っていった場合、ともに生活していた共有財産の請求権が認められなければ、男性だけが有利になるといった不公平な状況になってしまいます。

そこで最近の判例では、夫婦の貞操義務の観点から違法行為として裁くことと、内縁関係の解消によって損害を被ったものの保護とは区別して考え、限定的ながらも重婚的な内縁関係を解消された人に対する保護も図られるようになりました。

重婚的な内縁関係の場合、保護は限定される

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