夫婦の国籍は変わらないが、子どもは国ごとで異なる

国籍が異なるものどうしの結婚を渉外婚といいます。現在、国際化を背景に渉外婚が増えており、それに伴って渉外離婚も増加しています。それぞれの国の事情が異なることから、さまざまな問題点が生じています。

たとえば、

外国人と結婚して子どもが生まれたとき、相手が自分と子どもを置いて帰国してしまったがどうしたらいいのか?

離婚したいけれど相手の国では離婚では離婚は犯罪とされ、認めれないがどうしたらいいか?

など、結婚したときには想像もできなかった問題が、離婚を景気にいろいろと起こってくるものです。

ちなみに、結婚と国籍のことを混同してしまう人がいますが、結婚と国籍は別の問題です。外国人と結婚したからといって外国籍になるわけではなく、一緒に暮らすためには、配偶者ビザを取得することでその国に居住する許可を得ることになります。

離婚した場合も同様で、離婚したからといってすぐに帰国する必要はありません。生活の拠点が日本にあれば、定住者としての在留許可を得れば日本に定住することは可能ですし、その期間が長い場合は帰化することで日本国籍を取得することもできます。

子どもの国籍は、国によって取り扱いが異なりますが、日本の場合は、父または母が日本人であれば、どこで生まれても日本国籍を取得できます。

※配偶者ビザ・・・入国許可症。目的別に滞在許可期間が決まっている。

※帰化・・・日本国籍を得ること。代わりに外国籍は失う。

国債結婚・国際離婚の国籍

子どもの国籍はその国の国籍取得条件に従う

生地主義

その国で生まれた場合は、その国の国籍を取得できる

(アメリカ、カナダ、オーストラリアなど)

血統主義

父母のどちらかの国籍が子どもの国籍となる

(日本、中国、イタリアなど)

日本人の父とアメリカ人の母の間の子どもが日本で生まれた場合、子どもの国籍は日本となりますが、アメリカで生まれた場合は、アメリカと日本の2つの国籍を取得できます。

国際結婚

国際結婚

国債離婚後の姓はどうなる?

離婚後の日本人の姓

結婚前の姓をそのまま名乗っていた場合

姓は変わらない

山田花子→山田花子

外国人配偶者の姓を名乗っていた場合

3ヶ月以内に手続きすれば以前の姓に戻ることができる

ウェールズ花子→山田花子

離婚後の子どもの姓

結婚前の姓をそのまま名乗っていた日本人の子どもの場合

姓は変わらない

山田太郎→山田太郎

外国人配偶者の姓を名乗っていた日本人の子どもの場合

手続きにより日本人の親の姓に変更することができる

ウェールズ太郎→山田太郎

どこの国の法律に従うか

渉外離婚の難しさは、どこの国の法律に従うべきなのかから考えていかなければならない点です。日本においては、法令第16条によって、

  1. 離婚のときの夫婦の本国が同じ場合
  2. 夫婦の本国は異なるが、常時居住している地の法律(常居所地法)が同一の場合
  3. 夫婦の本国が異なり、夫婦で常時居住している地もない場合

のそれぞれについて、どこの法律に従うべきかを定めています。居住地が日本である場合は、基本的に日本の法律に従うことが原則だと考えればよいでしょう。

日本では離婚はプライベートな問題で、基本的には夫婦の話し合いで決めるべきだとの考え方を取っています。しかし、国によっては離婚そのものを認めていない国もあります。また、一般的に何らかの形で裁判所が関与する国が多く、当事者間だけで離婚の合意をしたのでは離婚の成立が認められないケースも考えられます。

したがって、渉外離婚の際には個々の国の違いを念頭に、調停や訴訟などあらかじめ裁判所が関与する形態をとっておくとよいでしょう。

慰謝料や財産分与が発生した場所に裁判権がある

法令第11条というものがあります。これは、私法の適用関係を定めたもので、離婚の際の慰謝料も法令第11条が適用されると考えられます。また、法例11条は行為地主義をとっており、渉外離婚の場合でも、結婚生活を送っていた場所の裁判所に裁判権があるとされています。

しかし、離婚にともなう慰謝料や財産分与の問題は、夫婦のさまざまな問題を抜きにしては考えられません。そこで、個人の権利義務関係を規律した第11条ではなく、1989年に改正された法令第16条を適用させるべきだとの考え方が支配的になり、現在に至っています。

ちなみに、相手の住所が日本にない場合でも、相手が配偶者を遺棄したり、行方がわからなくなっているようなケースでは、日本の裁判所での裁判が認められると解釈されます。

※行為地主義・・・慰謝料などが発生した場合、その発生原因となる不法行為が成立した「場所」を管轄する裁判所に裁判権があるという考え方

子どもの問題を含めプロのアドバイスを

子どもがいる場合、親権や監護権をめぐる解釈が国によって異なることで、単なる法理論で決することができない問題が発生します。そのために夫婦には、互いに子どもの福祉の観点に立った合意形成が求められるわけですが、どうしても夫婦間では解決できない問題も存在します。

その場合、最終的には裁判所を介して判断することになるわけですが、どこの国の法律に従うかにはいくつかの条件があります。親子間の法律関係を定める法例第21条には次のような条項があります。

  1. 子の本国法が父母の一方の本国法と同一の場合には子の本国法
  2. その他の場合には子の常居所地法

また、どこの国の裁判所で行うかは、夫婦の離婚の問題にともなって生じる問題であるため、夫婦の離婚の問題を扱う裁判所で行うとの考え方が一般的です。これはある意味で、子の本国法、または子の常居所地法という趣旨には沿いませんが、実際には、夫婦と子どもは同じ場所に居住していることが多く、夫婦が裁判を行う場所=子どもの常居所地となるほうが多いのではないのでしょうか。いずれにしても、渉外離婚には法律の適用レベルから複雑な要素が絡み合っており、実際に離婚する場合はプロのアドバイスを求めてください。

※常居所地法・・・普段住んでいるところ(国)の法律

子どもの問題はどこの国の法律に従うか?

子の本国法が父母の一方の本国法と同一の場合は、子の本国法に従う
  • 父がフランス国籍、子どもがフランス国籍の場合はフランスの法律
  • 母が日本国籍、子どもが日本国籍の場合は日本の法律
その他の場合は、子の常居所地法に従う
  • 父が中国国籍、母が日本国籍、子どもの国籍がアメリカ国籍で常居所地が日本の場合は日本の法律

子どもの問題はどこの国の法律に従うか?

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