離婚による子どもの姓の問題

離婚するにあたって、夫婦の姓にどのような問題がおこりうるかは、離婚後の戸籍で記載したとおりです。戸籍の筆頭者である側(多くは夫)の姓は離婚によって変更はありませんが、筆頭者でない側(多くは妻)の姓は、結婚前の旧姓に戻るか、結婚時の姓を継続するかの2つの選択があります。

そこで次に気になる大きな問題は、夫婦に子供がいた場合、その子供の姓はどうなるかということです。筆頭者でない側が結婚時の姓を継続して使用することを選択した場合は、夫と妻の姓は離婚しても同じということになりますから、子どもの姓も当然のことながら両親の姓と同じであり、離婚しても見かけ上の変更はありません。

子どもの姓について問題となるのは、結婚したことにより夫と妻の姓が異なった場合です。つまり、筆頭者でない人が旧姓に戻るという選択をした場合、当然のことながら夫婦の姓は別々となり、子どもにとっては両親の姓が異なることになってしまいます。

この場合の子どもの姓は、両親どちらの姓と同じになるのでしょうか。子どもを引き取って育てる親と同じ姓になるのでしょうか?実は、法律上はそうではないことに問題があります。同居しているというだけでは法律上、親子は同じ姓にはならないのです。

離婚による子どもの姓の問題

子どもの姓は結婚時の姓のまま

両親が離婚した子どもの姓は、法律上いったいどのように決められているのでしょうか。民法第790条第1項では、子どもの氏は結婚時の父母の氏を称すると定められています。つまり、子ども自身の姓には、両親が離婚したとしても変更は生じないということです。

結婚時に筆頭者だった人(多くは夫)が子どもを引き取った場合、親子とも姓に変更はないため問題はありません。

注意しなければならないのは、筆頭者でない人が子どもを引き取って育てるケースです。筆頭者でない人(多くは妻)は原則として旧姓に戻るとされているにもかかわらず、子どもは結婚時の父母の姓を名乗ることとされていることにより、実際に同居して生活をともにしている親子で姓が異なってしまうケースが少なくないのです。

筆頭者でない親と子どもを同じ姓にするには

子どもと姓を同じにしたい場合は、2つの選択肢が考えられます。

まず、見かけ上の姓を子どもと同じにする方法があります。これは、筆頭者でない人が離婚の際に称していた氏を称する届を離婚後三カ月以内に提出することによって、結婚時の姓を名乗るという選択を行う方法です。

この場合、筆頭者でない人と子どもの戸籍は別のままのため、見かけは同じ姓でも法律的には異なる姓とみなされます。しかし、日常生活において「戸籍上同じ姓かどうか」が問題となるケースはほとんどありませんので、便宜上同じ姓であればよいという人は、この方法が最も簡単かもしれません。

法律上も子どもと同じ姓でありたいとお望む人については、子の氏の変更にかかわる手続きをおこなわなければなりません。ここでいう氏とは、せいだけでなく戸籍も含む概念であることから、戸籍変更の手続きも同時に行うことになります。

したがって申請は直接市区町村役場とはならず、便宜上、家庭裁判所への申し立てを経由する必要があります。

くわしくは、子どもと同じ戸籍にする手続きを参照してください。

筆頭者でない親と子どもを同じ姓にするには

子どもの姓は子どもの意思を尊重する

同居しているからといって姓が同じでなければならないということはありません。姓が変わることに抵抗がある、周囲に親の離婚を知られたくないなどという離婚から、子ども自身が姓の変更を望まないケースもあるでしょう。

姓はその人のアイデンティティも含む重要な問題です。筆頭者でなかった人が自ら結婚時の姓を選択することによって、子どもと姓を合わせるというのならともかく、急性に戻った自分と同じ姓にしたいという勝手な都合で、本人の意思などおかまいなく強引に子どもの姓を変えてしまうのなら、問題があるといえるでしょう。「離婚の際に称していた氏を称する届」は離婚後三か月後以内に提出する必要がありますが、子の氏の変更については、機関の制限はありません。子ども自身の意向を尊重し、進学のタイミングや本人が希望する時期などを見計らって変更するという選択もあります。

また、民法ではそうした事情をふまえ、15歳未満の子供の場合の氏の変更については親権者が法定代理人として申し立てできるのですが、15歳以上の子どもについては、子ども自身が自らの意思で氏の変更を申し立てることができると規定しています。

子の氏の変更許可申立書

子の氏の変更許可申立書1

子の氏の変更許可申立書2

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