夫婦関係が解消されても親子関係は変わらない

離婚はあくまでも夫婦間の事柄です。婚姻関係にあった夫婦に子どもがいた場合、夫婦の関係が解消されたといっても、親子の関係までが解消されるわけではありません。

とくに、子どもと別れて暮らすことになった側にとって、離婚によって子どもとの生活までが失われるのは大きな悲しみです。たまにでもいいから一緒に食事をしたいとか、どこかに遊びに行きたいと考えるのが自然です。

もちろん、子どもが離れて暮らす親に会いたいと願うのも当然のことです。2011年の民法等の一部改正により、離婚によって離ればなれに暮らすことになった子どもに別居親が面会し、交流する権利は面会交流権として、明確化されました。

面会交流権の「面会」は子どもに対しての接触を指し、「交流」は、一緒に食事や旅行するなどの、ともに過ごす行為を意味しています。つまり、面会交流権とは、親子として自然な感情に基づく行動を認めようというものです。親子間の円滑なコミュニケーションは、子どもの福祉と利益に有益であると認められて権利です。

したがって、真に子どものための面会交流を行うためには、子どもの置かれている状況も考慮し、また父母の間でよい信頼・協力関係を保つことが大切です。

離婚しても子どもに会いたい

面会交流権

面会交流権が困難な場合

一般的に、面会交流権が認められた親子は、月1回程度の割合で時間と場所を指定し、一緒に食事をしたり遊びに出かけたりするケースが多いようです。

もちろん、月1回という決まりがあるわけではありません。調停の条項上で面会交流権を認める場合、とくに回数や期限を決めずに記載することもあります。したがって、月に何回もあっているような親子もいれば、誕生日などの特別な日のみ会っている親子もいるのが実情です。

しかし、面会交流の権利が認めらていながら、実際に子どもと暮らしている親が、子どもを不当に合わせないようにしているケースも少なくありません。

とくに子どもが幼く自分の意思で行動できない段階などでは、子どもを養育している親が非協力的だった場合、離れて暮らす親と子が面会交流することは困難だと言わざるをえません。

そのような場合、面会交流権を持つ親は家庭裁判所に申し立て、子どもに会わせてもらえるよう勧告を出してもらうとができます。また、子どもを会わせない親に対し、過料(制裁金)を課す間接強制の申し立てを認めた裁判例もあります。

※間接強制・・・人間の行為に関しては強制はできないため、制裁金を課すことによって履行を促すこと。

離婚成立前から面会交流権は認められる

離婚をめぐって夫婦間の争いが激しくなることがあります。その場合、一方の親が子どもを連れて出て行ってしまい、それによってもう一方の親と子どもが離ればなれになってしまうケースも想定されます。

このような場合であっても、家庭裁判所に面会交流の申し立てを行うことは可能です。子どもの福祉と利益を守る観点から、子どもが別居親と面会交流できる状態を回復する必要があります。

子どもによって、よほどのことがない限り、別れて住む親も大切な親でもあることに変わりはありません。離婚前であろうと後であろうと、別居という現実が子どもにとって深刻な影響を与えるものであるのはいうまでもないことです。

夫・妻それぞれが自分の意思を通そうとするのではなく、子どもにとってどうするのが一番いいか、冷静に考えましょう。

子どもとの面会交流権を確保する

子どもとの面会交流権を確保する

子どもの心情を思いやる夫婦の気持ちが大切

面会交流は、親と子供の当然の権利です。したがって、面会交流権が認められている相手の権利を制限することは、いくら親権者だとしても認められているのではありません。

しかし、実際には、制裁金などの取り決めをしていても、後になって「多少のお金を払ってでも子どもに会わせたくない」と居直ってしまう人も少なくなく、親同士の感情的な対立が、親子の当然の権利を侵してしまうケースが散見されます。

離婚を考えている夫婦が、相手に対して悪印象を抱き、二度と会いたくない、話したくないと考えるのは仕方ありません。しかし、親子の関係という観点で考えれば、子どもの気持ちを思いやるのは親として当然の努めです。自分の心情を優先するのではなく、あくまでも子どもの福祉と利益を最も優先にした状況判断を行いましょう。

もちろん、面会交流権が当然の権利だとしても、親と面会することで子どもに悪い影響を与えるような場合には、親が自らその権利を留保する姿勢も必要です。

とくに思春期のような微妙な年齢のときや、離婚後に再婚話が浮上している時期は、別れて暮らす親と会うことで心が動揺することが多いため、大人としての冷静な判断が求められます。

親権者変更調停申立書

子どものこころのケア

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