離婚後に一時的な援助が行われることもある

離婚後の生活にあたり、とくに経済的支柱を失う側(多くは妻)の収入の確保は容易でありません。収入面で考えると、得られる養育費財産分与慰謝料だけで離婚後の生活を支えるのに十分なケースはほとんどなく、現実的には厳しい生活が続く事になります。恒例の場合は就職そのものが困難ですし、若くても幼い子どもを抱えている場合には、収入のいいフルタイム正社員になるのは事実上難しいと言わざるをえません。

こうしたことから、離婚後の働き口を見つけたり、子どもの預け先を確保したりなど生活基盤が安定するには、しばらく時間がかかります。そのため、離婚前の話し合いにより、離婚後も一定期間、収入の多い側から収入の少ない側へ、生活費の援助を行うという取り決めがされることがあります。この離婚後の生活費援助は、離婚後扶養と呼ばれています。

ただし、離婚後扶養には法律的な規定がありませんので、調停や裁判などでは、財産分与や慰謝料の名目で支払われるケースが多くあります。しかし基本は、当事者同士の話し合いによる取り決めです。夫婦それぞれの年齢、子どもの有無や人数、お互いの収入などによって、金額や支払い期間が変わってきます。

離婚後扶養が受けられるのは、財産分与が少ない、病弱で働けない、幼い子どもを抱えていて働くのが難しい、現在の収入だけでは生活を支えられない、高齢などで就職先を見つけるのが困難、といった事情がある場合とされています。

弁護士に相談した場合の離婚費用例

弁護士に相談した場合の離婚費用例

支払期間や金額はケースバイケース

離婚後扶養の支払い期間や金額についての、客観的な目安はありません。あくまでも離婚後の生活基盤ができるまでの一時的な生活費の援助という趣旨に基づき、取り決めることになります。

支払期間については1~3年程度、長くても5年ほどというケースが多いです。離婚後の住居や働き口も決まり、生活が落ち着くのに妥当な期間ということです。就職が困難な状況にある場合には、さらに長めの期間になることもあるでしょうが、生活のメドがついた時点までと考えるのが一般的です。

離婚後扶養を負担する側にとっても、離婚後に経済的事情が変化する場合があります。リストラなどで職を失ったり、病気やケガで支払いを続けることが困難になったりというケースもあります。

再婚して新しい扶養家族が増え、離婚後扶養に回す経済的余裕がなくなるかもしれません。あくまでも一時的な援助のため、負担する側の経済的事情により取り決め内容も変化しうると認識しておいてください。

金額についても、明確な基準はありません。婚姻費用を一つの目安とするなら、年収500万円程度で子ども1人のケースでは、月額5万円くらいが一例と考えられますが、あくまでも金額はケースバイケースです。

支払方法は、毎月支払う場合と離婚時に一時金で支払う場合とがあります。時がたつと状況は変化しますから、後のトラブルを避けるためにも、可能なら一時金までの支払いにした方がお互い安心かもしれません。

扶養的財産分与の名目で支払われることも

法律に規定がない離婚後扶養の支払いについては、調停や裁判においては、財産分与慰謝料の名目で扱われるケースが多くあります。たとえば、一方の配偶者に経済的困難が見込まれる場合に、通常は公平である財産分与に対し、扶養的な加算が認められるケースなどです。これを扶養的財産分与と呼びますが、実質的な離婚後扶養の意味合いを含んでいえるといえるでしょう。

扶養的財産分与の金額や支払方法はさまざまですが、判例では、離婚原因の責任を考慮して金額を決めるなど、慰謝料の意味を含めている場合もあります。支払期間は3年程度が多いようです。

扶養的財産財産分与が認められる基準には離婚後扶養と同様に、配偶者の経済的自立支援、病弱、高齢、子どもの監護などがあります。なお、扶養的財産分与は、子どもの養育費とは別のものとして扱われます。

通常の財産分与は夫婦の共有財産が対象となりますが、扶養的財産分与で共有財産が少ない場合は、負担する側の固有財産も含めて分与の対象となることもあります。これは、収入の多い側の扶養能力が考慮されるためです。たとえば、住宅ローンが担保割れになってしまったなど共有財産がない場合でも、一方の犯罪者に経済力がある場合には、扶養的財産分与が認められるケースがあります。

なお、扶養的財産分与は離婚時だけでなく、離婚後に請求することもできます。しかし、通常の財産分与と同様に、離婚から2年を過ぎると法律上請求できなくなるので注意が必要です。

※扶養的財産財産分与が認められる基準・・・定職がないなど離婚後の収入が見込めず、慰謝料や財産分与の対象となる資産もない場合には、扶養的財産分与が認められることが多いです。

扶養的財産分与

扶養的財産分与

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