離婚とは、夫婦の戸籍を分けること

結婚すると、これまで生活を共にしてきた夫婦は別々に住み、独立した所帯で生活を営むのが一般的です。ですがこのような状態であっても「別居中だけどまだ離婚は成立していない」というケースもよくあります。離婚と別居、その大きな違いはいったい何を指すのでしょうか。

結婚とは、単に生活を分けることではありません。結婚するとは、結婚の際に一緒にした夫婦の戸籍を別々に分けるということです。つまり、法律上でいう離婚の成立とは、戸籍上、夫と妻がそれぞれ別の籍になることを指します。

ひとり親への公的支援制度などが申請できるのは、離婚が成立してからとなります。例えば別居していて夫婦の住民票も分かれそれぞれが独立した世帯主となっていても、また所得上の扶養関係が解消されていたとしても、戸籍上、夫と妻がまだ同じ籍に入ったままであれば、当然のことながら離婚が成立しているとはみなされません。

それでは、戸籍を分けるとは実際にどのようなことをさすのでしょうか。結婚する時には夫と妻それぞれの戸籍を一つにすれば済みましたが、離婚となれば、実はそのように簡単に事は運びません。まずは、戸籍を分けることの意味を理解しておく必要があります。

離婚届け

  • 印のところで「戸籍」が重要となります

戸籍謄本の提出が必要なのは、離婚によって戸籍が変更となるためです。

筆頭者の戸籍は変わらない

結婚の際に、夫と妻はそれぞれ親の戸籍から出て、新しい戸籍をつくったことを覚えているでしょうか?結婚のときそのような意識はとくになかったかもしれませんが、実は婚姻届けとは、それまで親と同じ戸籍に入っていた夫・妻それぞれが、独立して二人の戸籍を作るための届けなのです。

婚姻届けには筆頭者を記載する欄があり、現在でも習慣上、ここに夫を記載する夫婦が多いのですが、離婚に関しては、この筆頭者であるか否かで離婚後の戸籍に大きな違いが出てきます。

離婚について「籍を抜く」という表現があるように、離婚にあたり、筆頭者でない側(多くは妻)は、新婚時の戸籍から離れることを余技なくされます。望む望まないにかかわらず、筆頭者の戸籍に変化はありません。

つまり離婚するなら、筆頭者でない人は、結婚時の戸籍から抜いた自分の籍をどうするかを考えておかなければいけません。

筆頭者でない人の戸籍の選択は2段階

筆頭者でない人は、離婚後の戸籍をどうすればいいのでしょうか。離婚届では、まず2つの段階で戸籍について記入することになります。

婚姻前の氏に戻る者の本籍という欄には

  1. もとの戸籍に戻る
  2. 新しい戸籍をつくる

という選択欄が設けられており、結婚に際し戸籍を抜く側(多くは妻)は、まずこの2つから1つを選択しなければなりません。1.を選択した場合、「もとの戸籍」とは結婚前に属していた親の戸籍のことですので、離婚後の本籍地は親と同じものになります。

2.を選択した場合は、さらに決めなければならないことが2つあります。つまり本籍地をどこに定めるか、新戸籍の姓をどうするかという2点です。

手続きにおいて戸籍謄本・戸籍抄本が必要になる場合が多いことを考えると、申請がしやすい場所に設けるとよいかもしれません。新戸籍の姓を旧姓に戻すか結婚時の姓を名乗るかどうかも決める必要があります。

戸籍謄本

離婚後の戸籍は慎重に

筆頭者でない人は、「離婚後の戸籍をどうするか」を決める必要があります。戸籍については日常生活で意識することはほとんどありませんが、いざ変更したとなると、その後さまざまな必要な手続きが生じてきます。

たとえば、運転免許証やパスポートなど公的な身分証明書となるような書類には、必ず変更が必要となります。戸籍は、私たちの一生の間に起こる親子関係・夫婦関係の移り変わりや現状を登録し、証明する公募です。

戸籍に変更が生じれば、当然その記載内容と同じになるよう身分証明書類の変更を行わなければなりません。

また、学校に在籍中である場合や今後入学する場合には、戸籍上の名前の記載を求められます、たとえば在学証明書や卒業証書など、本人の学歴などを証明するための公的書類発行に際しては、記載は戸籍と同一でなければ証明にはならないためです。

また、子どもがいるなら、自分自身の戸籍の決定とはいえ子どもの姓や子どもの戸籍も視野に入れつつ考える必要も出てきます。離婚後の戸籍を選ぶことは、離婚後の人生を自覚的に歩むことの第一歩ともいえるかもしれません。慎重に検討して決定しなければいけません。

結婚・離婚と戸籍の関係

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