財産の価値の評価と分配はこうして行う

預貯金や現金は、分与割合さえ決まればそのまま分けられます。しかし、それ以外のものは、現金に換算して価値を評価する必要があります。

もっとも、値が張らない家財道具などはわざわざ査定しなくても、欲しいものを話し合いで単純に分けたほうが面倒がありません。

ただし、高価な家具がまじっていたり、一方がほとんどを持っていったりする場合は、現金分を減らすなどの調整をするとよいでしょう。

株式や国籍などの有価証券といった投資商品は、売却して分けるか、時価評価して現物を分けるかの2つの方法があります。評価は購入時の価格ではなく、時価で行います。投資商品は高値のときも安値のときもありますから、時期によって分配方法を考える必要があります。高値のときなら売却したお金を分けるのもよいですが、安値で短期的に上昇が見込めそうなら、現物で分けるほうがよいかもしれません。

高価な美術品などは鑑定してもらえますので、売却しない場合は、品物をもらう側が評価額を現金分から差し引くなどします。加入中の生命保険などは、名義変更したり解約して返戻金を分割するなどで処理します。

なやましいのは、住宅などの不動産です。売却してお金で分けるのがすっきりするのですが、どちらかが住み続ける場合には、譲渡するなどの手続きが必要です。不動産を分ける場合には、財産価値を評価しなければなりません。住宅ローンがなければ時価評価になります。購入価格ではないので注意してください。時価は、不動産鑑定士の鑑定などで評価します。

さらに、不動産の場合は税金の問題があります。譲渡する側には譲渡所得税があかかり、受け取る側には、所有権移転登記(名義変更)のときに登録免許税(不動産価格の1%)がかかります。また、財産分与として不動産を受け取った場合には不動産所得税がかかります。

※生命保険などの解約・・・解約しなくても、返戻金相当額で生産する方法もあります。また、子どもの学資保険は、親権者に渡すことが多い。

※譲渡所得税・・・財産分与が現金なら、原則非課税。不動産でも、居住用住宅の譲渡なら特別控除を受けられる(ただし、譲渡する側の儒民業があること、譲り受ける側が配偶者でないことが条件)

財産分与

住宅ローンが残っているマイホームはどうなるか

離婚するなら、財産の清算は必ず行うことになります。夫婦といっても共同名義の財産は意外と少なく、預貯金や不動産など多くの財産が、夫・妻どちらかの個人名義となっていることが多いでしょう。そのような場合、それぞれの個人名義のものが自分の取り分だと考えてしまいがちです。

しかしそれでは、割合が著しく一方に偏るという夫婦も多いことでしょう。これでは、公平な清算とは程遠くなってしまいます。

離婚による財産分与の規定については民法768条で触れていますが、その記載はわずかであり、夫婦が「その協力によって得た財産の額その他一切事情を考慮して」決定するとの規定のみです。このほかには、具体的な算定基準を法的に定めたものではありません。

とはいえ、清算的財産分与においては、分与の割合は公平であることが必要です。そのため判例では、分与割合について、財産形成に対する夫・妻それぞれの寄与度(貢献度)によって決まるとの考え方をとっています。

それでは、その寄与度とはどのように決まるのでしょうか。単純に財産形成への寄与度といってしまうと、夫婦の一方が働いて家計を支え、もう一方が家事を受け持って生活を支えている場合などでは、公平な分与が難しくなります。

また、夫・妻とも収入がある場合でも、一方が家事のため勤務時間を制限するなどのケースも多く、一概に収入割合を財産形成の寄与度としてしまうと不公平なことが多いのが現状です。

そのあめ判例では、収入額のみではなく家事労働も評価し、夫婦の分与割合を原則2分の1として認める傾向にあります。

対象になるかどうかでトラブルになる財産

財産分与の対象となる財産家どうかは個別に判断しますが、その判断をめぐってトラブルになりやすいものもあります。

たとえば退職金は、結婚期間中に支給されていれば、預貯金・現金などに還元されて財産分与の対象になりますが、支給される前に離婚したときはどうなるのでしょうか。若いときの離婚では対象になりにくのですが、いわゆる熟年離婚の場合ならば、離婚時に退職したと仮定した対処金の予想額について、あるいは、結婚期間に相当する金額について、財産分与の対象として認められる可能性は高くなります。

借金も財産ですから、住宅ローンや車のローンなどは分与の財産とみなされます。しかし、夫か妻のどちらかの個人的な借金は、連帯保証をしていない限り、財産分与の対象とはなりません。つまり、配偶者が消費者金融で知らないうちに借金していたなどの場合、返済の義務はありません。

また、離婚前に別居していれば、別居中にそれぞれが築いた財産は対象にはなりません。夫婦の協力の元に得た財産とはみなされないためです。

変わったところでは、医師など高収入が得られる特殊な資格も、分与の対象となることがあります。資格所得を配偶者が支えていた場合、夫婦間の協力のもと、現在の生活を得たとされるからです。しかし、資格を金額でどう評価するかはなかなか難しい面もあります。

なお、話し合いで合意できない場合は裁判所に判断を求めることも可能です。

※財産分与は、実際に退職金が支給された時点で行われることが多いです。また、結婚前の期間に相当する部分・離婚後の期間に相当する部分は対象外となります。

トラブルになりやすい資産

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