離婚時の具体的な取り決めが肝心

離婚を前にして、夫・妻で話し合って養育費の取り決めをしても、約束通りの額を負担できない場合や、負担そのものを行わない場合があります。

とくに養育費は離婚後から長期にわたって負担されるものですので、時間がたつにつれ当初の約束が守られなくなることも多くあります。

離婚した後に子どもを妻が育てているケースでは、養育費を受け取っているのは全体の2~3割と言われているのが現実です。それぞれに事情の変化はあるにせよ、長期にわたる養育費の支払いを確実にするには、まず、離婚する前に夫・妻の間で条件などを具体的に取り決めておくことが肝心です。

養育費の条件などについて2人の合意ができないときは、家庭裁判所に調停を申し出ることができます。それでも合意が得られないときは、最終的に審判で決定されます。

離婚前に養育費の取り決めをしていた場合は、過去の未払い分を後から請求することも可能です。

ただし、養育費を負担できなくなる理由はさまざまで、必ずしも悪意あるものばかりではありません。

会社が倒産して転職した、病気で休職したなどやむを得ない事情で収入が減ることがあります。ですから、支払いが滞った時点で、まず話し合いの機会を持つことが必要です。

相手が養育費を負担する意思があるならば、相手の事情を受け入れたほうがよい場合もあります。相手の収入が減った期間は、減収に応じて養育費の減額を受け入れれば、相手も義務を意識し今後も負担を続けるかもしれません。

単にルーズな性格で支払いが滞っている場合でも、話し合いを持つことによって養育費負担を再開する可能性もあります。

養育費の取り決めをしなかった理由

養育費の取り決めをしなかった理由

負担しない相手には裁判所から勧告や命令をだしてもらう

相手が話し合いに応じないときや合意が得られない場合には、以下の手段をとることになります。

まず、相手に内容証明郵便で養育費の支払いを督促し、相手が応じない場合は法的な処置を検討します。協議離婚ならば、離婚時に強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、地方裁判所による強制執行で差し押さえを実行することができます。

公正証書が無い場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることから始めなければなりません。まずは調停により養育費について正式に取り決めた後、その支払いが行われなくなってから、ようやく履行勧告や履行命令の申し立てができます。

履行勧告とは、家庭裁判所が支払状況を調査し、相手に支払うように助言・指導・勧告などをすることです。(手数料は無料)。

ただし、法的な拘束力がありませんので、相手が従わなければ支払わせることはできません。それでも、裁判所からの韓国などになじみのない一般の人であれば、心理的プレッシャーを与えることができます。

履行勧告に従わない場合には、より強い措置である履行命令になります。

養育費の支払い期限を家庭裁判所で設定し、相手に支払いを命令するものです。申し立てには500円の手数料が必要です。

履行命令でも、支払いそのものを強制する力はありません。しかし、従わなければ最高10万円の過料(制裁金)を支払うことになっています。実際に相手にダメージを与えることができる措置です。

離婚時に調停や審判・判決などであらかじめ養育費の取り決めをしていた場合には、再度の調停は必要ありません。申し立てにより、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を相手方に出してもらうことができます。

滞った養育費を取り立てる手段

滞った養育費を取り立てる手段

拘束力のある文書で約束しておけば強制執行ができる

履行勧告や履行命令でも相手が支払わない場合には、地方裁判所による強制執行(直接強制)で取り立てることになります。

なお、強制執行を行うには、債務名義と呼ばれる書類が必要です。債務名義として認められる書類には、公正証書(強制執行認諾文言付き)・調停調書・審判書・判決書などがあります。

強制執行は、支払義務者の給与や退職金・預貯金口座・不動産・家財道具などを差し押さえ、養育費の支払いに充当する措置です。給与は2分の1まで差し押さえることができ、過去の未払い分だけでなく将来の分も差し押さえが可能です。

給与の差し押さえができるので、相手がサラリーマンの場合は確実な効果があります。自営業者の場合は、売掛金なども差し押さえの対象となります。

もし、相手の勤務先や財産の状況がわからなくなったとしても、地方裁判所に申し立てれば、情報を開示させることができます(財産開示制度)。

ただし、公正証書による強制執行の場合は、財産開示制度を利用することはできません。相手の財産の所在や状況を自分で調べなければならないので、現実的には弁護士など専門家の助けが必要となる場合がほとんどです。

いずれにしても、強制執行は強い効果があるので、養育費を負担する側の立場からすれば、実行されると大きなダメージを受けます。負担が困難な状況になったときは、むしろ進んで減額交渉を元配偶者に持ち掛けるべきです。

※差し押さえ・・・2004年4月1日から、法改正で強制執行が強化されました。以前は、給与の4分の1までしか差し押さえできず、過去分のみ適応だったため、不払いのたびに申し出る必要がありました。

大学生の養育費

大学生の養育費

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