婚約とは男女間で結婚の約束をすること

婚約破棄について述べる前に、そもそも、婚約とはどのような状態を指すのかを明確にしておく必要があります。

婚約とは、ひとことでいえば、男女間で将来の結婚を約束すること。すなわち、婚約契約の予約を行うことです。日本の場合、婚約といえばお互いの家に挨拶に行って結納を交わし、婚約指輪を交換するといった一連のセレモニーが行われることが多くみられますが、これらは婚約成立の要件ではありません。たとえ、口約束であっても、男女の間で結婚の約束ができていれば、婚約は成立したとみなされるのです。

婚約は、一般的には結婚に向けての祝福すべきスタートラインのようにとらえられますが、法律的に見た場合は異なる観点で定義されます。すなわち、婚約した者は、将来結婚するように努力する義務をお互いが負うこととされるのです。

義務を負った以上は、それを履行できなければ責任が問われるというのが法の見解です。したがって、正当な理由のない婚約破棄は、違法行為とみなされ、損害賠償の対象となるケースも少なくありません。しかも、婚約破棄の損害は、婚約にいたるまでに要した金銭や物質的なものにとどまらず、婚約を破棄された側の心の痛手や周囲との人間関係など、さまざまな損害についても賠償責任が発生するのです。

損害賠償が発生

婚約破棄で損害賠償が発生

正当な理由がない婚約破棄では損害賠償が請求できる

正当な理由がなく婚約破棄が発生した場合、婚約破棄についての責任がある相手に対し、破棄された側から、婚約不履行に対する損害賠償を請求することができます。

不当に婚約を破棄された場合の損害賠償について、もっとも損害額が算定しやすいのは、物的損害についてでしょう。これには、婚約指輪や結納金、結婚式場や新婚旅行のキャンセル料、新居の準備費用などがあげられます。

これらは、実際に発生した損害を1つずつ具体的な金額に置き換えて、全体の損害額を算定することができます。また、精神的損害に対しては慰謝料として請求が可能ですが、予約の不履行に対する期待権の侵害という範囲のことですから、法的な離婚の慰謝料よりも低額なのが一般的です。

※期待権・・・契約その他にともなって当然発生するだろうと期待できるもの、また期待することが当然だとされる権利のことです。

将来得られたかもしれない利益に対して請求できる?

そのほか、損害賠償請求できる対象として得べかりし利益、つまり得られたかもしれない利益というものがあります。典型的な例としてあげられるのが、女性が結婚に備えて退職してしまったケースです。

この場合、再就職の可能性などを勘案し、退職から再就職までの期間の収入分を損害としてカウントしたり、再就職によって減収になった分を差額として計上することで、一定の損害額を算出することができます。しかし、現実はそれほど単純ではないでしょう。

たとえば、この女性は再就職しても、将来ほかの人と結婚する際に再度退職する可能性があります。ということは、彼女がいつまで働いているかは不確定であり、不確定な将来に対してまで差額を損害として認めるのは難しいともいえます。また、結婚を機に仕事をやめるかどうかは、最終的には自分の意思や価値観に基づいて選択することですから、その選択が結果的に不利益をもたらしたとしても、それは自分自身で負うべきであるという考え方もあります。

したがって、得べかりし利益に対する請求については、婚約者の意見がどの程度反映されたかなど、退職にいたる経緯を精査しながら計上していくのが一般的だといえるのでしょう。

婚約破棄で精神的損害

婚約破棄の事実をどのように証明するか

婚約破棄は婚約契約の予約の不履行ですから、正当な理由なく一方的に婚約を破棄した場合は、相応な責任を問われることになります。ただし、ここで気をつけなければならないのは、婚約をしたという事実をどのように証明するかということ。最後にこの点について触れておきます。

婚約が破棄された場合、2人が本当に婚約していたかどうかを立証することは、口でいうほど用意なことではありません。結納を交わしていたとか、パーティを開催したという事実(物理的に事実を証明できるモノやコト)があれば疑問の余地はありませんが、問題になりがちなのは、結婚の約束が当事者の口約束だけだった場合。

この場合、相手は極力責任を逃れ湯応と、婚約が成立していなかったと主張することが予想され、婚約の事実を証明することは困難を極めるケースが多いのです。そこでこういう場合に必要なのは、客観的に婚約の事実を証明していくことです。

実家に挨拶に行ったとか、利害関係のない第三者に婚約者として紹介したとか、当事者以外の人にも2人の婚約を認識していたことがわかる事実を積み重ねて証明していく必要があります。

どうしても許せない場合や、泣き寝入り、怒りで自分をコントロールできない、連日夜も眠れず食事も喉を通らない、など人によって様々ですが、自分で解決しようとはせず、近くで信頼できる弁護士に相談してみることで、事実証明することができ、慰謝料を請求できた事例もあるので、信頼できる弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

婚約破棄は弁護士に相談

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